研究項目B02

B02-1 脳内身体表現を変容させる運動制御モデル

研究概要

適応的な運動機能の実現には,自身を取り巻く環境を認知して自己身体と周辺環境とを関連づけ,運動を計画,実行する一連の脳内処理が適切に行われることが 必要である.その際,脳内身体表現をうまく利用することで,適切な運動制御(fast dynamics)が実現されていると考えられるが,脳内身体表現の獲得過程,並びにその利用機序に関する研究は極めて少なく,不明な点が多い.また,脳 内身体表現は,感覚情報をモニタして経時的に更新(slow dynamics)されるため,身体や感覚情報が変化すると脳内身体表現も変容し,それに従い運動制御も変容すると考えられる.また,学習などを通して運 動制御が変容すると,生成される運動や感覚情報も変化し,脳内身体表現も変容するはずである.本課題では,特にヒトやサルの直立姿勢制御や歩行を研究対象 として,「脳内身体表現と運動制御の相互作用」に焦点を当て,適応的な運動生成における脳内身体表現の役割解明を目的とする.従来の要素観察的な医学・生 理学における方法論とは異なり,本課題では脳神経筋骨格系システムモデルを介した構成論的方法の利用により,生体システム全体を通して機能的側面から理解 し,従来方法では限界のある生理学的仮説の検証や機能的役割の明確化を目指す.具体的には「姿勢・歩行制御では,随意運動の生成に先行する予期的姿勢制御 や運動指令の協調構造を示すシナジーの形成が不可欠」という生理学的仮説に加えて,「身体・感覚の変化による脳内身体表現の変容が,予期的姿勢制御やシナジーの構造を変容させ,更に学習を通した制御構造の変容により脳内身体表現も変容する」ことを作業仮説として,脳内身体表現と運動制御の相互作用 を力学モデルの構築により明らかにする.その際,A02-1, A02-2, C02項目と連携し,身体や感覚の変化後,リハビリ過程における脳活動データのデコーディングより得られる脳内身体表現,筋電図の解析から得られる予期的 姿勢制御やシナジー構造,そして運動自体の変容データを,それぞれシミュレーション結果と比較することでモデルの妥当性を評価し,構成論的な仮説検証や機 能解明を行う.更にC02 項目と連携し,モデルを介した最適化から機能再建に適切な感覚情報を提案することで,リハビリ応用を目指す.

研究組織

ota

太田 順
OTA, Jun

  • 研究代表者 太田 順(東京大学 人工物工学研究センター 教授)
  • 研究分担者 青井 伸也(京都大学 大学院工学研究科 講師)【B03-1と連携】
  • 研究分担者 千葉 龍介(旭川医科大学 医学部 准教授)
  • 連携研究者 緒方 大樹(東京大学 人工物工学研究センター 助教)
  • 連携研究者 柳原 大(東京大学 大学院総合文化研究科 准教授)【B03-1と連携】
  • 連携研究者 土屋 和雄(京都大学 大学院工学研究科 名誉教授)
  • 連携研究者 青柳 富誌生(京都大学 大学院情報学研究科 教授)
  • 連携研究者 藤木 聡一朗(東京大学 大学院総合文化研究科 助教)
  • 連携研究者 白藤 翔平(東京大学 人工物工学研究センター 特任研究員)
  • 連携研究者 余 永(鹿児島大学 工学部 教授)
  • 連携研究者 辻内 伸好(同志社大学 理工学部 教授)