研究項目C01

C01-1 脳内身体表現の変容を用いたニューロリハビリテーション

研究概要

中枢神経障害による運動障害には,根本的な治療方法は未だに存在せず,様々な治療的介入法がアドホックに提唱され,乱立しているのが現状である.中枢神経系の可塑的変化は四肢切断や末梢神経の障害においても誘導され,脳内身体表現が変容し特異な感覚障害(幻肢・幻肢痛など)を生じる.そこで本課題では中枢神経損傷が身体に,身体損傷が中枢神経に及ぼす影響を統合的に捉えるユニークな視座に基づき,脳内身体表現の変容様式の理解を目指したアプローチを以下の2点から展開する.①幻肢から探る脳内身体表現の理解,②脳内身体表現への介入を通したニューロリハビリテーションの確立である.①では,脳内身体表現は,外部から観察出来ないためその実態を知ることは難しい.そこで,四肢切断後に切断肢が残存する感覚である幻肢に着眼し,行動学的指標と神経生理学的指標を用い評価する.行動学的評価では,主観的な幻肢描画に加え,身体空間は身体外空間に比べ空間注意の指向性が強いという特性を利用し,幻肢の空間的マップを作成し評価を行う.また,神経生理学的手法により幻肢に対応する一次感覚運動野の体部位局在マッピングを行い,脳内身体表現の定量的指標の作成・評価を目指す.②では,幻肢痛と中枢神経障害後の運動麻痺に対して,仮想世界にて,アバターの運動を自己運動のような感覚を与えるシステムと非侵襲的脳刺激を利用し,①の指標を基に脳内身体表現の変容を誘導し運動麻痺と幻肢痛の軽減を目指す.また,このシミュレータにより患者に与える視覚像やそのタイミング,運動パターンなどを変化させ,脳内身体表現のfast・slow dynamics を統合的にシミュレーションし,最大の効果が期待される感覚入力/運動出力の組み合わせを求めリハビリテーションプログラムを構築する.A01 項目とはアバターに身体保持感や運動主体感の付与と①の評価指標作成に相互連携をとる.B01 項目とは臨床データの解析とモデル化との照合を緊密に繰り返し,幻肢の発現・消失機序,痙縮や姿勢調節障害の発現機序の解明を目指す.

研究組織

izue

出江 紳一
IZUMI, Shinichi

  • 研究代表者 出江 紳一(東北大学 大学院医工学研究科 リハビリテーション医工学分野 教授)
  • 研究分担者 稲邑 哲也(国立情報学研究所 情報学プリンシプル研究系 准教授)
  • 連携研究者 田中 尚文(帝京大学ちば総合医療センターリハビリテーション科 教授)
  • 連携研究者 大内田 裕(大阪教育大学 准教授)
  • 連携研究者 松宮 一道(東北大学 電気通信研究所 ブレインウェア研究開発施設 教授)
  • 連携研究者 阿部 浩明(広南病院リハビリテーション科 兼 東北大学大学院肢体不自由学分野 非常勤講師)
  • 連携研究者 関口 雄介(東北大学病院リハビリテーション部 兼 東北大学大学院肢体不自由学分野 非常勤講師)
  • 連携研究者 綾木 雅彦(慶應義塾大学医学部眼科学教室 特任准教授)
  • 連携研究者 林部 充宏(東北大学大学院工学研究科 教授)